照明が静かに暗くなっていき
その暗さが心地よくなってきた頃
舞台奥の引き戸が そろりそろり と開きだした
外だった


そこに 女がひとり 地に這いつくばり へばりつき
のそりのそりと こちらへ向かってきた


獣のような おばけのような
おどろおどろしく
非人間的な動き
醜いその姿 


かと思えば
花を一輪もちながら歩かないように歩く 
歩いてないのに確実にこちらに向かってくる


かと思えば
妖精のように はしゃぐ


かと思えば
着物姿に毬を持ち
背中で 物を語りだす


奇妙であり 怖くもあり 醜くもあり おどろおどろしい
その中に なぜか美しさと儚さが見え隠れする
悪夢のような 変な夢を見た時のような この感覚


何かに似ている
ああ そうだ 漱石の「夢十夜」のような 奇妙な美しさ を味わった




舞踏を見に行った